スキンケアマイスター・コスメマイスターと美容の科学

1.美容とは

図1「美容」と「美容学」
図1「美容」と「美容学」

良きに付け悪しきに付け、人は見た目で相手を判断しがちです。第一印象が大切でることは入社面接に限らず、様々な場面で実感します。

他人からの印象を少しでも良くしたいと思う気持ちは当然であり、それに向かって人は努力することがありますが、それを「美容」と総称、そして人が自らの印象を改善しようとする美容行動を学問として体系的にとらえることを「美容学」と当協会では定義します。

2.美容の科学と美容の技術

図2 美容学は科学と技術の統合から成る
図2 美容学は科学と技術の統合から成る

「医学は科学scienceと医術artの統合によって実践される」と言われています。「美容学」もまた“美容の科学”と“美容の技術”の統合から成り立っています。

“美容の技術”は、多様で高度な技術の習得が必要です。匠の技を身につけ“ゴッドハンド”と称される美容技術者も存在します。知識に経験を重ねることから生まれる勘と判断力を総合的に発揮する“美容の技術(美容術)”の持ち主です。その領域に効率的に近づく為には、まずは土台となる“美容の科学”という知識が必要となります。医療からエステティック、ネイル、痩身などまで広範囲に及ぶ美容の技術はその概略を述べるにとどめ、必要な場合はそれぞれ成書をお読みいただくこととしたいと考えます。

美容の科学の対象とする臓器は、もちろん顔面を中心とする皮膚ですが、頭髪、爪を含む全身の皮膚と汗腺、皮脂腺などの付属器、さらには脂肪組織、筋肉組織、眼、歯牙に及びます。よって、皮膚科学がその基本ではありますが、化粧品学、美容皮膚科学、形成外科学、美容外科学、眼科学、口腔外科学、歯科・審美歯科学、婦人科学、栄養学、薬学などの科学も包含します。さらには香料学、色彩学・光学などの領域も当然含まれてきます。

さらに美容学に欠くべからざるものに感(官)能があります。自覚的な感触であり、他覚的に評価しづらいところもあり、学問としては成立しにくいものではありますが、美容学あるいは化粧(品)学のなかでは何の疑問も無く存在しています。

このように、美容学のなかの美容の科学には、広範な分野が存在しており、現在、医・美容の世界に業を為す者、将来美容を業とせんと期する者、さらには美容施術を受けんと欲する者、己に適切な化粧品を選択して使用したいと願う者には、美容の科学の基本を習得することが、ある人には必須であり、ある人には身につけることが望まれます。それを学んだ上で、知識に経験を重ねることから生まれる勘と判断力を総合的に発揮する美容の技術、美容術が初めて誕生するのです。

3.美容学の中心

図3 スキンケアマイスターカリキュラム

では、実際にはどのような知識の習得が望まれるのでしょうか。基本は顔の皮膚科学と化粧品学であると思います。

美容の最たる対象は顔面を主とする皮膚であり、それに対する美容術の最も頻用されるものは化粧品です。皮膚科学の近年の発展はめざましいものがあり、構造学的のみならず、そのバリアとしての機能についてはさまざまな知見が報告され、また免疫組織としての機能が明らかとなり、種々の疾患の病態が理解されるようになっています。

化粧品学も、安全性に関する検討の時代から機能を有する化粧品の開発に移行し、医薬品との垣根が不明確となるボーダーレスの時代に急速に転換しています。紫外線によるシミ、シワ、タルミなどの皮膚障害を『光老化』と称しますが、まさにこの光老化を双方向から解明し、改善方法、予防方法を追求してきたのが皮膚科学、美容皮膚科学、美容外科学をはじめとする医学と化粧品学であり、今これらの融合の時代に突入しています。

この時代において、美容に携わる者は皮膚科学をはじめとする医学と化粧品学の最前線を知識として有するべきであり、またそれを日々更新していく必要もあります。

「一般社団法人日本コスメティック協会 検定試験参考図書
コスメマイスタースキンケアマイスター」より